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 藤裕美(とうひろみ)さんの肩書きは「眼鏡スタイリスト」。スタイリストといっても、めがねのスタイリングを手がけるだけではない。知識と経験に裏打ちされた言葉でめがねについて語られると、めがねを好きにならずにはいられない。まるで、藤さんのめがね愛が伝染するかのように。

 高校生のときに、地元福岡のめがねセレクトショップに出合ったのがはじまりだという。通いつめたその店で選び抜いて、ようやく1本のめがねを買ってもらった。家に帰って鏡の前でめがねをかけてみると、部屋着を着ているのに、なんだかおしゃれに見える自分がいた。

「1本のめがねをかけるだけで、こんなに変われるなんて!」

 そのとき、めがねの魅力に目覚めた、というか、ハマったのだと思う。

 20歳のときには「交通費なしでもいいです!」と頼み込んで始めた眼鏡店のアルバイトのために、日曜・祝日には福岡から熊本まで通った。同じ時期に、めがねをネジからすべて自分の手で作ろうと彫金を習い始め、個展を開いた経験もある。24歳で、高校のときに出合った福岡のセレクトショップの店長を務めた。

 何よりも藤さんを虜にしたのは、めがねを通して誰かの人生の転機にかかわることができる、という経験だった。たとえば、めがねが似合わないと思い込んでいる人にぴったりのめがねを見つけてあげると、めがねを好きになってくれる。おしゃれに目覚める。モテるようになる。鬱病が治ったりする。それがとにかくすごいことだ、と思えたのだ。

 めがねのもつ魅力と、それを作ったデザイナーの素晴らしさを語り始めると、藤さんのボルテージは一気に上がる。店に来るお客さんにもその熱は伝わり、「そんなにめがねが好きなら、あなたを信じるよ」という人が増えていった。

 藤さんは、撮影に使った私物のめがねについても、それは熱心に語る、語る。写真を撮られるときにはあんなに無口だったのに……とそこにいた全員が感じたのだった。写真を撮られるのは、ほんとうに苦手らしい。

 やがて30歳になった藤さんは「めがねをもっと知りたい」という思いでドイツのめがねメーカーFROSTに1年間勤務する。20歳からもう、めがね一筋。

 帰国後、めがねをもっと知って欲しい、たくさんの人にめがねを好きになってもらいたい、と「眼鏡スタイリスト」として活動を始めた。眼鏡店ではない場所や、メディアで、メガネについて発信していくことが藤さんの今の仕事だ。

 さて、めがねなしで生きていけないのは、藤さんだけではない。ヒトは誰しも、めがねが必要な時期がやってくる。そのときに備えて、何をすべきか。

  • 出演:藤 裕美

    1977年福岡県生まれ。眼鏡スタイリスト。10年間、眼鏡店で働きながら彫金技術を学び、ネジからすべてめがねを製作、個展も開く。2001年、24歳のときに店長としてショッププロデュース、買い付け、さまざまなイベントを企画。2007年、ドイツへ渡り、めがねブランド「FROST」に勤務。海外のめがねブランドのデザイナーや眼鏡店と交流を深め、他国のめがね文化を知る。帰国後、2009年から眼鏡スタイリストとして活動を開始。いとうせいこう氏との出会いにより、HP「眼鏡予報」をスタート。著名人のスタイリングや、誌面でのスタイリング、講演会、デザインアドバイスなど、めがねにまつわることを何でも手がける。また「KODOMO眼鏡プロジェクト」や、老人ホームでのボランティアなど活動の場をさらに広げている。
    8/31(土)23:00~「心ゆさぶれ!先輩 ROCK YOU」(日本テレビ系)に出演します。
    http://www.ntv.co.jp/rockyou/
     

    「眼鏡予報」 http://glasses-o-o-brille.com
    『めがねを買いに』(WAVE出版)定価1,680円
    http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784872905373/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影:萩庭桂太

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